■杉町淳美氏は陶芸作家で、学生時代は植物とそれを取り巻く環境について勉強をされていました。今回は自然エネルギーに関する私たちの論文について、以下の感想をいただきました。杉町氏の陶器は私も愛用しています。コーヒーカップ、ポット、皿に薄いピンク、水色、グリーン、黄色で彩色した作品は「生きる喜び」、図柄の草花は「生命」を感じさせます。白い皿に草の葉を書いた作品は、私の好きな作品です。熊谷守一やマティスの絵画を連想し、「私たちの大事な地球と生き物の命を守る」というメッセージのように感じます。ぜひ杉町氏の素敵なHPをご覧下さい。(河野仁 記)
2024.9.28 受理
「自然エネルギー と人との共存」-成功事例の驚き!
陶芸作家 杉町淳美(すぎまち あつみ )
河野仁先生とは20年ほど前に大阪のとある陶器まつりにてお会いし、私が農学部出身であることもあり、毎年お会いした折には陶器のこと以外にも色々とお話を聞かせていただいておりました。
現在奈良県で陶芸作家として主に食器のデザイン・製造をしており、百貨店やギャラリー等で展示販売をしております。
HP:https://www.eonet.ne.jp/~utsuwaatsu/
Instagram:https://www.instagram.com/atsumi_sugimachi/

大学時代は陶芸ではなく神戸大学農学部生物環境制御学科にて土壌学を専攻し、植物の根とそれに接する土壌(根圏土壌)の相互作用について研究をしておりました。人工的に作り出すことが難しい天然素材としての土に元来興味をもっておりましたが、その後色々な出会いがあり、現在の職業に至ります。携わるほどに土にはその奥深さや多様性を感じ、益々興味惹かれております。
○ 日本の科学者2024年2月号「山間の町村と小都市における自然エネルギー 利用促進と環境保護,経済循環 ─ 先進施策例と課題」の感想
拝見して最初に強く感じたのが、メガソーラーや風力発電など、自然エネルギー開発がこんなに受け入れられて上手くいっているところが日本にもあるんだという驚きです。というのも、身近にあるメガソーラー建設計画については反対運動しか聞いたことがないからです。
報道等で大きく世間に取り上げられた件では、昨年春に就任した奈良県知事が前知事と地元住民との間で合意済みの防災拠点計画を破棄、メガソーラー整備用地にすると発表し問題になったことです。連日県からの地元への説明会がテレビ・新聞にて報じられておりましたが、全くの平行線で収拾がつかない様子に見えました。(こちらは今春、議会の反対によりメガソーラー整備に限らない防災拠点として整備計画を見直すことで議決したようです。) また、より身近な件では近隣地域でメガソーラー建設を巡って住民と開発会社との間で裁判にまで発展しているところがあります。2021年に熱海市で発生した無計画な開発による土砂崩れの時に類似の危険がある開発計画として全国紙にも載ったのでご存知かもしれませんが、奈良県生駒郡平群町の山林におけるメガソーラー建築のための山林の切り崩しにより、そのふもとにある多数の住宅地が土砂崩れに飲み込まれる恐れがあることが判明したと記事になりました。それ以前から地域の方は反対運動しておられたようですが、こちらは現在も訴訟中のようです。
背景や実際それぞれの計画にどのようなメリットデメリットがあるかは十分な判断知識が無い為、両件ともどちらに賛成と言える立場にないのですが、とにかく『メガソーラーなどの開発はどこでも揉める』という印象しかありませんでした。
しかし後者の平群町の件で反対運動に参加している友人がおり、論文で書いておられたような「自治体と企業と住民が連携して自然エネルギーの利用が成功しているところもあるらしい」と話しましたらとても興味をもってくれました。成功例のように自治体も参加して電力の地産地消等地域に還元されるような仕組みになるような方向なら、その他解決しなければならない事柄はあったとしても上手く行く可能性も出てくるのにと言っていました。 自然エネルギーの割合を増やしていかなければいけないという方向は自明だと思いますが、このように成功例があることを拝見すると、物事の進め方次第でもっと移行は加速できるのではと思いました。
私が農学部に在籍していた1990年代はオゾン層破壊について世界中で解決に向けて議論されていました。この時は環境破壊とは不可逆のものであり悪化速度は遅くできても取り戻すことは出来ないと思っておりましたが、様々な分野で解決に向けての努力が行われた結果解決に向かっているようです。地球温暖化問題についてもこのように諦めることなく様々な分野で協力しあうことで解決に向かっていくことができると願ってやみません。
先生の論文を拝見して、電力の自然エネルギー化と人の共存について新しい見方を知ることができました。諦めること、無関心になることも環境破壊の助長につながると思いますので、今後も関心を持ち続け、できることを探していきたいと思います。