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2025.10.16

セメント産業の脱炭素への道筋  1.5℃目標を目指して今できる取組みを急げ
                           (自然エネルギー財団)

 セメントは200年以上の歴史をもち、ビルやトンネル、橋、ダムなど、さまざまな社会基盤の基礎素材です。一方で、国際エネルギー機関(IEA)によると、世界のセメント産業が直接排出するCO2は世界の全排出量の6.2%を占めるとされ、日本でもセメント産業は、鉄鋼、化学に次ぐ産業分野で第3位の多排出部門となっています。こうした背景からセメント産業には一層の脱炭素化が求められています。
 セメントの製造過程では、原料の高温焼成のための燃料燃焼や、原料・製品の粉砕などにともなうエネルギー由来の排出が約40%を占めます。一方で、主原料である石灰石の熱分解(CaCO₃→CaO+CO₂)による原料由来の排出が約60%に達します。このため、たとえ使用するエネルギーをすべて脱炭素燃料や自然エネルギー電力に転換しても原料由来の排出が避けられず、「脱炭素化が難しい産業」とされています。
 それでも、世界ではセメント産業の脱炭素化に向けたシナリオ研究や技術開発が進み、先進企業による具体的な取組みも進んでいます。本報告書では、セメント産業の現状と課題を整理し、主要な脱炭素シナリオを紹介するとともに、日本のセメント産業が今後取り組むべき重点課題を提起しています。本書を通じて、セメント産業の脱炭素化への関心が高まり、1.5℃目標に整合する移行が着実に進むことを期待します。。