活動記録

研究会参加 2023年12月9日~12月10日
 日本科学者会議東京支部第22回東京シンポジウム(拓殖大学文教キャンパス) がオンライン併用で開催されました。第5分科会「2035年を見据えた気候変動対策の課題と市民社会の役割」(佐川が設置責任者)は、公害・地球環境問題懇談会(JNEP)が共催し、会場14人、オンライン6人で合わせて20人が参加しました。JSA-ACTのメンバーでは、佐川と歌川が報告。
 冒頭のJNEP長谷川事務局長の挨拶に続き、佐川が「2035年の電力・エネルギーをめぐる国内外の動向について」を報告。2024年はCOP29に向け、2035年を含む新たな目標を提出することになっており、国内では第7次エネルギー基本計画が出されることから、2035年の目標引き上げについて運動を強めていかねばなりませんが、それらの意思決定に向けて将来世代の意見が重要であることを確認しました。最近、2035年までの電力部門の完全ないし太宗の脱炭素化がG7で合意され、日本でも急速な転換が求められることになります。
 続いて、JNEP奥田さが子さんが、「若い世代や学校現場で気候危機問題を考えるために」と題して、和光中学校・自由の森高等学校、都留文科大学での出前授業の取り組みを紹介しました。4年前は事前アンケートで、「再生可能エネルギーなんて知らない」と答えた生徒が半分もいたけれど、授業を通し、また同世代であるFFFと協働しての授業の工夫もする中で、認識を深め、自分たちに何ができるかを考えはじめるということを、授業後の感想やレポートも示しながら話されました。
 Fridays For Future Tokyo(FFF)の田原美優さんは、「若者の気候ムーブメントが目指す社会」と題し、ご自身の思いや取り組みをリアルに交えながらFFFの目的や政策について紹介。「気候正義」をめざす立場から、温暖化の被害だけでなく加害の責任も意識しながらやっていること、街角での対話や参加しやすいデモンストレーションを工夫してがんばっているということでした。質疑では、親の反対、周囲の目をどう感じているかといった議論が盛り上がりました。
 産総研歌川学さんは、「2050 年排出ゼロに向けた脱炭素対策と2035年目標」と題して、日本全体と地域の対策についての報告をされました。日本全国では、既存技術を中心で2030年に2013年比で70%削減、2035年には同80%の削減ができると定量的に示され、国全体では光熱費の削減効果が投資額を大きく上回り、得になる対策であることを紹介。地域は多排出事業所があるかどうかで大きく様子が異なりますが、それぞれの地域で大幅な削減が見込めるということでした。
 今回の報告を出発点にして、今後の削減目標の引き上げや具体的な対策を実施させるために若い世代とも協力した取り組みを進めたいと決意を新たにしました。     (佐川)

●現地調査 2023年4月1日
 兵庫県宝塚市にある宝塚すみれ発電所第2号を後藤と今井の2名で見学した。目的は市民発電所事業の課題を探るためである。
 NPO法人新エネルギーをすすめる宝塚の会の三名の方に、宝塚市内の大林寺の境内に設置された発電所 第2号の案内と共に、これまでの事業のあゆみをご説明いただいた。事業主体は非営利型株式会社宝塚すみれ発電。全部で6つの発電所を宝塚市内で運営している。第2号は、宝塚駅から車で10分ほど山の方に上っていった大林寺の境内、住宅地とも隣接している47.88kWの太陽光発電所。低圧(~49.5kW)の区分では大きい方である。資金は社債という形で出資を募り、銀行の融資も受けた。パネルの空きスペースに、兵庫県の「県民まちなみ緑化事業」を利用してオタフクナンテンを植えたが、2013年の設置以後、管理維持の点で緑化事業は継続が難しくなったとのことだ。
 見学後、NPO法人および株式会社のこれまでの活動や、6つの発電所の設置までの経緯のお話を伺った。それぞれ異なる方法で設置場所の確保や資金調達を行っていることから、市民発電所を実施する上でのポイントや課題がよく分かった。共通項を以下に挙げる。
スキーム・用途
・ソーラーシェアリング(営農型太陽光)は、収穫作業などで市民の参画機会を創出することが可能(第4号:さつまいもの収穫に支援者や学生らが参加)。
・屋根上自家消費で地元産業への貢献、クラウドファンディングによる資金調達(第5号:丹波乳業での中古パネルを用いた自家消費モデルでは、丹波乳業のヨーグルトなどをリターンとして用意しクラウドファンディングに挑戦した)
設置場所の確保
・自治体との共同事業創出(第3号:宝塚市への働きかけ、市主導の市民発電所設置モデル事業の実現)
・太陽光発電事業へ理解のある事業者との繋がり(第2号:大林寺の建物の屋根上には以前より太陽光パネルが設置されていた)
採算性
・FIT(固定価格買取制度)の買取価格の低下、現在低圧野立ては10円/kWhと開始時の3分の1以下に(宝塚すみれ発電の場合、6つの発電所は2016年までに稼働)
・自家消費モデルの採用(第5号:丹波乳業での中古パネルを用いた自家消費モデル)
組織の持続性
・運営形態(宝塚すみれ発電の場合、NPO法人と株式会社で役割を分担)
・草刈りなどのメンテナンス
・資金管理、市民出資の場合の返済業務
                                     (今井)


●研究会参加 2022年11月19日~12月11日
 日本科学者会議 第24回総合学術研究集会(大阪・オンライン開催)に参加。B1分科会にて発表。(後藤、歌川、河野、佐藤)


●現地調査 2022年9月15~18日  (参照:JNEPニュース ,No.318 ,7-9pp)
 岩手県 葛巻町の自然エネルギーと秋田県の風力発電について調査を行った。
 葛巻町は盛岡からNNEに45kmの山間にある。町の人口5,800人(2021年)、面積485km2である。町の面積の85%が森林である。標高約1,000mの上外川高原に28基、合計65.5MWの風力発電がある。年間平均風速8 m/sである。所有者はJ-Powerである。最も近い住宅から2.5km離れており、騒音問題はない。町には固定資産税が入る。山間に風力発電所ができた経緯は、高原で牧畜を行っており、そのために高原まで道路と送電線が作られており、風力発電をする物理的条件が整っていた。この他、町営の太陽光発電503kW が公共施設に電気を供給している。畜糞を使ったバイオガス発電37kWと熱180MJが施設内で使われている。町長が過疎化対策を意識して積極的に自然エネルギーにも取り組んでいるのが印象的だ。葛巻町はミルクとワインとクリーンエネルギーの町として発信している。自治体主導で自然エネルギー導入を進めるモデル自治体と捉えることができる。
 秋田県は積極的に風力発電の導入を進めている。ここは日本海側に面しており、冬季の西風が強く、風力発電に適している。現在のところ海岸や山上に風車が設置されているが、更に、秋田県の能代市由利本荘男鹿市三種町の洋上(海岸から2km~5kmの範囲)で設置計画が進んでいる。一方、にかほ市では風車騒音による被害の訴えが出ている。今回は風車騒音に焦点を当てて、にかほ市の風車騒音について、騒音計を持参して測定を試みた。調査当日は風が弱く、風車の回転が小さいために、音は全く聞こえなかった。
 また、にかほ市から能代市の間で海岸線にそって風車の設置状況について写真撮影などを行った。騒音の影響を避けるためには少なくとも1kmのセットバックが必要だが、既設風車については、民家から数百メートル以内にあるものもある。環境省の風車騒音に対する新クライテリア35dB(あるいは残留騒音+5dB)が既設の風車に対しては適用されない事が、風車被害が改善されない理由のように思える。(河野)


●現地調査 2021年4月16  (参照:JNEPニュース ,No.318 ,7-9pp
 自然エネルギーで村おこしを行っている岡山県西粟倉村(人口1,370人)の現地調査を行った。村は、森の森林資源を使って産業を興し、村で生計が成り立つことを目指している。この15年間に村内で34の事業が生まれ、この11年間に村の子供の人数が20%近く増えている。地球温暖化対策として、化石燃料から風力、太陽光、バイオマス等の自然エネルギーへの転換が求められているが、日本では大資本中心の開発になっており地域に収益がない事、更に自然環境保護、低周波騒音などの問題のために、自然エネルギーの普及が大きな壁に直面している。その中で、西粟倉村は村が主体となり、計画的に村民の収益と自然エネルギーの開発の両方を追求し、一定の成果を出している貴重な例であることが分かった。(河野)


●研究会参加 2020年12月4日~6日
 日本科学者会議 第23回総合学術研究集会(東京・オンライン開催)に参加。D1分科会にて発表。(河野、後藤、歌川、佐川)