2024.11.6 受理 ケンジ ステファン スズキ

■ ご寄稿いただいた 、 ケンジ ステファン スズキ (日本名:鈴木健司)氏は1944年岩手県 生まれで、1967年からデンマーク在住です。日本とデンマークの架け橋として、研修・講演活動など情報発信を行っています。社会起業家、環境活動家、S.R.A.Denmark代表、「 風のがっこう」代表、風車運営会社2社の代 表としてご活躍です。今年の10月に来日され、北海道襟裳岬(えりも町)訪問は 地元テレビ で大きく取り上げられました 。「風のがっこう」ホームページに投稿なされた訪問記の転載をお願いしましたところ、快くご許可いただきました。


2024.11.6 受理

えりも町を訪ねて思ったこと

 デンマーク「風のがっこう」代表  ケンジ ステファン スズキ(Kenji Stefan Suzuki)


 筆者は10月1日から30日まで訪日してきました。訪日の最大の目的は襟裳岬への旅でした。筆者は1991年からデンマークの風力発電の対日輸出に関与し1993年3月石川県の松任市にデンマーク風力発電機1号機を納品以来、2002年7月に退職するまで風力発電機の対日セールス・マネージャー職に就いていました。この間、襟裳岬の強風についてはデータで知り、聞いてもいましたが、どれだけの風が吹いているのか, 体が動ける内に, 体験したいと思い計画を立てました。
  そして10月3日から10月5日の 2泊3日の日程を組み、北海道放送の取材班の支援を得て、えりも町から襟裳岬を訪ねてきました。襟裳岬を訪ねたのは10月4日でその日は強風が吹き, どれだけの風が吹いたのか翌日教えて頂ただきました。それをもとに10日4日24時間の平均風速を計算しましたところ秒速14.4メートルという数値が出ました。
 筆者は風力発電事業に参入し30年以上関与し、居住しているデンマークはもちろん、イギリスのウインドファーム他、ドイツ、オランダ、イタリアのウインドファームを視察・見学していますが、襟裳岬で体験した風に当ることは無く、強風に感動しました。理由は襟裳岬には膨大な風力エネルギーが存在することが解ったためです。どれだけの風力エネルギーがあるか、10月4日一日当たりの平均風速14.4m/s(秒速)は風力発電機の定格出力の風速ですが、例えば定格出力(発電機の定盤値)400kWですと1日当たり9,600~10,000kWhの発電が出来るという風です。同じような風が年間100日吹いた場合、百万kWh (10,000×100日) の発電量に値する風が吹いているということです。
 襟裳岬には小型の風車が数多く設置されていましたが、増速機の搭載が無い直流の10kW風車でした(確認はしていませんが)。恐らく大量の電流を流せる仕組み(ケーブル容量)が出来ていないためだと思いました。
 2024年のえりも町の人口数は約4100人ですが、襟裳岬の風はなくなることは無いと思います。そんなことから、これから先何年かかろうとも襟裳岬の風を利用することで町の活性化が図れるのではないかと思ってきました。何故ならば、風力エネルギーはその場所における資源で、唯一火力発電や原子力発電と違うのは、安定した発電が出来ないということですが、発電に必要な燃料は要らず、発電後の廃棄物も出ないという大きな利点があります。参考までに、もし百万kWhの電力を石炭火力発電所で発電した場合の石炭量、燃やした後に出る公害物資の量を記載しますと以下の表1の通りです。


 表1の数値で見る通り百万kWhの電気を石炭火力発電所で発電した場合、石炭の消費量は約332トン、この石炭を燃やすことによって排出される二酸化炭素の量は約772トン他廃棄物として燃え殻52.3トンがでます。また332トンの石炭を輸入した場合約760万円に当る外貨が使われることになります。このようなことから、風力発電は不安定な発電設備ですが、沢山の利点があります。ネット情報によると、襟裳岬の風速と風量は秒速10メートル以上の風が吹く日が年間を通し290日あると言われており、膨大な風力資源があるということが解りました。
 そんなことで、今後何十年かかろうとも、襟裳岬の風力エネルギーを利用するため、送電線を補強し、えりも町の人たちの経済的発展に繋がるような政策を採り入れることではないかと思いました。