■ 原子力発電問題 全国シンポジウム2024(敦賀 )にご参加された 近藤真理子 氏(河野委員長の知人)からご寄稿いただきました。近藤様は、現在「日本の科学者」の編集委員をなさっています。アースディはまでらこうえん事 務局や、公園あそび 、育児のサークルなどの地域での子育て支援等経て、現在大和川市民ネットワークの運営委員として、子どもたちとの河川にまつわる様々な活動をしています。この夏は警戒アラートとの戦いで、子ども期のあそびの保障の危うさを肌で感じたとのことです。
2024.9.1 受理
原子力発電問題 全国シンポジウムの見学会に参加して
「日本の科学者」編集委員 近藤真理子 (こんどう まりこ)
日本科学者会議原子力問題研究委員会主催の 「第39回原子力発電問題 全国シンポジウム2024敦賀」 の企画の1日目の見学会に参加した。2日間でひとつの目的を達成するであろう企画に1日のみの参加はいささか不真面目ではないかという思いも抱きつつ、勢い申し込んだ次第である。参加のきっかけは、原子力発電所とその地域、街を見たかったということで、不純な動機ですみません、という感じではあるのですが・・ ・
バスで迎えられ,研究会の委員長自らチャーターバスを運転し、奥様が福井県や敦賀のこと、新しくできた北陸新幹線と駅舎のことという大まかな街のことから、原発のこと、原発にまつわる街の「恩恵」について説明をわかりやすく、かつユーモラスに説明をしてくださった.北陸新幹線が開通をして、たくさんの人がやってくるようになり、新幹線敦賀駅には数々の日本一があるなどというミニ知識も教えていただいた。しかしその一番ということの裏側には、原発マネーや発電所を多く設置されている自治体としての国との関係もあるのかもしれないと思ってしまうのはひねくれているのだろうか.どういうわけか福井県に発電所が集中をしていること、知事の「仕事」は原子力発電所のある自治体だからこそのある種の経済的な活性化を目指すこととなっていることの説明をしていただいた。この2つはおそらく密接な関係があり、小さな町が活性化していきながら原子力発電所はなくならないだろうなということを実感した。しかし小さな町の活性化は、日本中の死活問題であり、発電所の有無に頼る課題ではない。
見学コースは2か所の資料館と発電所の見学であった。とてもきれいな設備で、原子力発電のことが紹介されていて、女性のガイドの方にいくつか質問をするのだけれど、いまいち答えが明快ではない。いろんな関係性もあり、それを踏まえて検証、説明ができる原発専門の学芸員をおくというのもなかなか困難であろうし、知らないこと、知らされてないことも多いのだろう。学芸員が原子力発電は安全ですと訴えるにしても、3.11の事実がある限り、不用意な発言ができないというのが誠実な学芸員であろう。

きれいな海と空と山、大阪の海とは当然比べものにならないし、日本海特有の美しい海岸と海、そこに立つ発電所、海産物くらいしか産業がなく、土地もある。そこに発電所建設は労働の機会,産業振興としては利点もあるように見えたのであろう。しかし、3.11で明らかににどんな恐ろしいことがおきるのか、どれほど恐ろしいのか、被害の甚大さがすさまじいものであるのかということを目の当たりにしても、静かに再稼働が始められる。被害の大きさを踏まえて、安全対策として巨額の費用を投じた設備を造る。自然破壊も原発の問題ほど声が上がっていないかもしれないが、自然への負担も大きい。決して持続可能な安全な対策ではない。美しい景色と巨大な自然物の違和感を日々見て暮らす人々の思いはどんなものだろうかと思いを馳せる 。

自身も大阪府堺市に住み,笑い話であるが堺の子の写生は、何をテーマにしても煙突が描かれていると言われて育った。煙突,それは堺・泉北臨海工業地域のもので、空を見れば煙突、時々上がる小さな(おそらく近くで見たら大きい)炎に不安を感じながらも、いつも大丈夫だから大丈夫だよねと「いつも」に根拠なく安心をしてきた。おそらくそれ以上に「いつものように大丈夫」に騙され続け、実際、堺以上の恐ろしい事態を東日本大震災で目の当たりにしてあの大きな発電所を見 て何を感じておられるんだろうかと思わずにはいられなかった。
その後交流会へと続き、駅へ送っていただくのだが、交流会の司会や運営、駅への送り、翌日の他のホテルの宿泊者への対応など、きめ細やかで、温かい空気の流れる時間であった。委員会の皆様、実行委員の皆様本当にお世話になりました。ありがとうございました。